昨年渡辺淳一さんの講演を聞いたとき、とても面白かったので、その後彼のエッセイは興味をもって読んでいる。週刊新潮に毎週”後の祭り”というエッセイ、今週は「知より情だよ」から医師の息子が放火によって3人を死なせた事件について医師である父親によってICUという勉強部屋に追い込まれ、日夜勉強を強要される。少しでも成績が下がると父に殴られて、そんな父親に告げ口する母を恨む。この父親は息子を医学部にいれることしか考えていなかったようだが、医師がそんなに良い職業なのか。田舎に住む医師一家の狭量としかいいようがない、と言い切っている。その後に日銀の福井総裁について、彼は東大法学部を主席で出て、4つの公務員試験に合格した四冠王で勤めたのが超一流の日本銀行。最近の行動は化けの皮が剥がれて世間の常識が欠け、頭の良い男らしい才知も策略もない。つまらない人間に成り果てた。気がついたらただぼーと年齢をとっただけのおじさんになってしまった。まず情を教え、そこで豊かな感受性を養った上で。知を教え、さらに人と接して、人間を知っていく。当たり前の順番を間違えているのが現代の教育だと言っている。彼も医者だったから、今回の事件を特別に感じたのだろう。美しいものを見て美しいと感じ、悲しいメロディーを聴いて哀しいと感じる、嬉しい時は大声で笑い、淋しいときは涙ぐみ、醜悪なものには嫌悪し、憐れなものには同情する、そうした情操教育こそ、学校で教えるべきもの、知はその後に続くものでである。渡辺淳一は毎週考えさせられるエッセイを書いているが、講演もとても含蓄があっておもしろかった。
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