元京都の芸者「おそめ」さんの伝記を読んでいる。彼女は祇園の芸者から銀座のバー「おそめ」のママをしていた女性です。彼女は学校も出ていない、また、出ていないことを隠そうともしなかった、政治も経済も語ろうとせず、文士たちの作品もろくに目を通さず・・・ただ、ひたすら古風で、一歩も二歩も引いて控えて、口数少なく、優しく包み込むような雰囲気を漂わせている。そして何より客に尽くす。その時代銀座ではこの「おそめ」と「エスポワール」といういまでいう高級クラブが競っていた。おそめさんは競うとは思っていなかったらしいが、エスポワールの川辺ママはその彼女にものすごく競争心が湧いていたらしい。当時この2つの店に通った文士は川端康成や白洲次郎、大佛次郎、さんたちが通ったそうだ。銀座というところは大昔よく会社の人に連れていってもらったが、私はいつも感心していた。あの当時知性を身に着け、文化人も意見を投げかけ、それに答えて男たちに伍し、政治経済の話が出来、英語、フランス語まで出来る女性がいました。エスポワールのママはそのような女性を採用していたらしい。私が丸紅のOLをしていた頃、もう時効だから書きますが、丸紅の当時社長の2号さんが丸紅の紅をとって「べに」というバーをしていました。3号さんが丸紅の当時社長の名前「しのぶ」という名でやはりバーをしていて競争をしていました。何度も行きましたが、ああいう時代があったのです。今ではマスコミがうるさいからとてもじゃないけどそんなこと出来ないでしょうが。ただ、こういうママたちの教養溢れる会話など、当時まだ若い私でしたが、凄いなぁと感心したものです。あんな面白い時代を観てきたので、今回読んでいる「おそめ」---伝説の銀座マダム、すごく理解できます。
最近のコメント